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子どもたちの未来を育てる、知の交流拠点。 ~阿波市立土成図書館~ Part 3
Part 1・2に引き続き、設計の特徴について阿波設計事務所の皆さまにお話をうかがいました。
「温故知新」をテーマに、地域のシンボルを目指し設計
当施設の設計プロポーザルにおいて、当社が提案したコンセプトは「温故知新」です。土成の伝統的な民家は、広い敷地のほぼ中央に主屋が置かれ、その周囲を附属棟(納屋、蔵)が取り囲む構成となっています。本計画ではその配置形式を取り入れ、先人から受け継がれた景観や伝統形式を継承することで、どこか懐かしく馴染み深い印象を与えました。地域の人々が身近に感じられる施設となるよう、建築の形態や色彩等の外観デザインにも配慮しています。
一方で古来の伝統の継承に留まらず、現代要素を融合する「古今折衷」が、故 (ふる) きを温 (たず) ねて新しきを知る「温故知新」に通じるものです。建物は和風建築に欠かせない勾配屋根とし、二段構えの切り妻屋根形状によって、シンプルでありながら意匠性と機能性に優れた屋根架構としました。深い庇の出は、室内への日射遮蔽と軒下はアプローチ通路やテラス席の半屋外空間として活用し、真っ直ぐな庇による水平ラインを強調した端正なファサードを創造しています。
また、家具や内装材には徳島県産木材を使用し、木の温もりが利用者のストレスや緊張感を和らげる癒しの空間として仕上げました。天然木は着色せず、木肌をそのまま表出。壁や柱型には鋼製パネルを採用することで、掲出物はマグネットで留められます。鋼製パネルは木目調と濃灰色の組み合わせにより、天然木との調和やコントラストを生み出し、全体的に和を感じさせるコーディネートとしました。
さらに、設計段階から「サイン」にも配慮しており、書架側面だけでなく、棚上に大きめの案内を取り付けて、利用者が本を探しやすくしています。また、十進分類に応じたカラーをつけて感覚的にも分かりやすくしています。
当施設は高台にあり、豊かな自然から癒しが得られる環境です。さらに故三木武夫内閣総理大臣の就任記念樹がシンボルツリーとして目立つよう整備されており、新施設の誕生とともに地域のシンボル的な存在となることが期待できます。公民館と図書館との融合により、世代の異なる人々が共に過ごし交流することで、親から子、孫へと思い出を受け継ぐ場として愛され、活用されることを願っています。
阿波市立土成図書館(土成中央公民館併設)
所在地:徳島県
施主:阿波市
設計:株式会社阿波設計事務所
延床面積:1,432.9m2
開架書庫:60,500冊
閉架書庫:17,270冊
「SCENE 103」2020年12月発刊より