トピックス

行きたくなる図書館づくりで、“生徒が主役”の教育を推進。 ~長崎日本大学高等学校・中学校~ 後編


 長崎日本大学高等学校・中学校は、長崎県諫早市にある中高一貫教育を行う日本大学の付属校です。前編に続き、同校の教育における図書館の役割と展望について、校長の力野孝典氏と図書館司書の平塚理恵子氏にうかがいました。


長崎日本大学高等学校・中学校 校長 力野 孝典 氏

長崎日本大学高等学校・中学校 図書館司書 平塚 理恵子 氏


グローバル時代を生きる「人間力」を育む


 図書委員たちが考えた推薦図書は入り口の展示台にレイアウトされ、 定期的な「図書館だより」の作成を通して本と親しむ啓発活動も活発です。司書は図書委員の主体的な活動をサポートするとともに、今後は教員との連携を図りながら、授業での図書館活用を活発化していくつもりです。そのスペースが「調べ学習のエリア」です。生徒たちの自主的な調べものはもちろん、進路学習などロングホームルーム活動にも活用できます。
 インターネットが普及した現代では、欲しい情報が誰でも手軽に入手できるようになりましたが、玉石混交の情報が溢れるネット世界から、真に価値ある情報を入手するのは容易ではありません。その点、選び抜かれた良質な情報が集積する図書館なら、価値ある情報を得ることが可能であり、求める情報を見つけ出したときの喜びは何ものにも代えがたいといえます。そのプロセスで得られる多様な情報もまた、知的好奇心をさらに刺激してくれるでしょう。


「生徒が主役」というスローガンを掲げる本校では、主体的に考え、行動する力や、それを伝えるコミュニケーション力の修得を教育的な課題としています。これらはグローバル時代を生きるためにも重視される力です。本校では中高6年間を通して英語力に磨きをかけながら、コミュニケーションツールとしての英語を使いこなすことはもちろん、テーマに応じた英語でのプレゼンテーションやディスカッション、外国人留学生との交流などにより、国際社会で活躍できる力を生徒が主体的に獲得する機会を設けています。新図書館は「生徒が主役」の教育を推進する場として、今後大いに貢献してくれるものと考えます。


調べ学習のエリア/生徒が各々、調べ学習をしたり、授業やロングホームルームなどに活用できる調べ学習のエリア。


 一方、近年の学校図書館は、主体的な学びを支える「情報センター」としての機能が求められ、ICTの積極的な導入例が増えています。それを否定するものではありませんが、本校において優先したいのは、この新図書館が生徒にとって「心安らぐ温かい空間」となり、落ち着いて本と向き合うことによって「自分の居場所」と思えるようになることです。ブックセラピーという言葉がありますが、「図書館」という空間そのものが生徒の心に安らぎをもたらす「図書館セラピー」があってもよいのではないでしょうか。平湯モデルの図書館は、セラピー効果まで期待できるものと感じています。
グローバル社会で求められる多様性を認める力、自ら考え、それを伝える力など「人間力」と呼ばれるものの多くを育てる環境が、新校舎と新図書館により整備されました。さらに平湯モデルならではの豊かな感性を育む力により、将来、生徒たちが力強く未来に羽ばたいてくれることを願っております。


大型本架の前には丸テーブルを設置されており、「デザイン美術科」の生徒などが美術関連の大型本を広げて見ることができる。


長崎日本大学高等学校・中学校
所在地:長崎県
施主:学校法人長崎日本大学学園



前編を見る:前編では新校舎と新図書館への期待についてお話をうかがいました。



「SCENE 98」2019年7月発刊より



関連するエントリー

最新のエントリー

エントリー一覧へ >