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事例紹介:学校法人 日本体育大学 浜松日体中学校・浜松日体高等学校
校舎とともに生まれ変わった図書館が、主体的に学ぶ意欲を育む。
浜松日体中学校・浜松日体高等学校は、中高一貫教育で実績のある静岡県下有数の進学校である。創立50周年記念事業として完成した新校舎には見学者が頻繁に訪れており、中でも静岡県初の導入となった「平湯モデル」の新図書館に注目が集まっている。平湯モデルの魅力とは何か、生まれ変わった図書館への期待を校長の松田清孝氏にうかがった。
新校舎は教室棟(南ウイング)と特別教室棟(北ウイング)、それらをつなぐ中央棟で構成されています。教室棟1階にはメニューを選んで食事ができる200名収容の学生食堂、中央棟4階には大型の映像装置・音響設備を備えた365名収容のホールが新設され、新校舎とともに建設された第2体育館内には温水プールも整備するなど、全国に誇ることのできる学習環境を整えることができました。
その中でも教育への大きな寄与を期待できるのが、県下初の「平湯モデル」を導入した新図書館です。今まで別棟にあった旧図書館に対して、中央棟3階に設置した新図書館は教室がある1号館から近く、中学生・高校生ともに利用しやすい動線上にあります。しかも平湯モデルによって、書架が単調に並んだ本の所蔵場所という図書館のイメージが一変しました。
中高一貫教育の中で、成長段階に合った活用が可能。
生徒の知的好奇心を刺激する平湯モデル。
本校を見学にくる小学生が、新図書館の前に来ると一様に「わーっ!」と声をあげ、引き寄せられるように入っていきます。平湯モデルの魅力は、その驚きと喜びの声に集約されるのではないでしょうか。
入口はガラス張りで廊下から中を見通すことができ、視線をさえぎらない高さに抑えられた書架が、開放的な図書館を演出しています。入口の右手には新着書が表紙を見せてディスプレイされ、展示台に並べられた幅広いジャンルの本とともに生徒たちを招き寄せます。画集や写真集などの大型本は、緩いカーブを描いた湾曲書架に収納されており、大判の表紙がダイナミックに並ぶ上の段と、下の段からはサイズがまちまちの本が飛び出し、思わず手にとりたくなる気持ちにさせます。個性的な書架が本の魅力をアピールする平湯モデルは、生徒たちの知的好奇心を大いに刺激するようです。
まだ開館して1年に満たない状態ですが、昼休みになるとオープンスペースにあるドーナツベンチや丸テーブルは、思い思いの本を手にした中学生を中心に毎日賑わっており、貸し出しカウンターに生徒が行列をつくる姿も日常の風景として馴染んできました。
また、浜松市は大地震による被害が危惧されるエリアですが、8度の傾斜がついた床置きの書架は安定感があり、東日本大震災でも倒れなかったそうです。その耐震性の高さも、平湯モデル導入の大きな理由となりました。
目的に合った使い方ができるエリア分け。
入口に近いエリアで読書の楽しみを発見する「楽しみ読みのエリア」に対して、館内奥の落ち着いたスペースに設けられているのが「調べ学習のエリア」です。
文科系、理科系に分けてそれぞれ40席を確保し、授業でも活用できるようになっています。自習や調べものに集中したい生徒にはブースで区切った一人席もあり、放課後になると席を取り合うほどの人気ぶりです。PC・検索コーナーには、無線LAN環境を利用して自分のパソコンを持ち込む生徒も見受けられるようになりました。ICTツールを用いた授業の展開は本校の課題であり、図書館を拠点にICT教育の進展も図っていくつもりです。
自分に合った活用法を発見し、成長につなげてほしい。
本校では中学生に「朝読書」を習慣づけ、毎日始業前の読書を通して多彩な本に出会う機会を設けています。中学時代は知的好奇心を高め、幅広い知識を吸収する重要な時期であり、読書を通して身につけた国語力は、文科系・理科系を問わずあらゆる教科のベースになります。やがて高校生になって進路目標が定まると、与えられなくても自分に必要な読書や調べものを自主的に行なう習慣をつけていきます。中高一貫教育の中で、生徒の成長段階に合わせた活用が工夫できる。それが平湯モデルの図書館なのです。
また、社会で活躍できる人材育成をめざす本校では、自分自身をアピールできるコミュニケーション力や、国際社会で通用する豊かな教養も身につけてほしいと考えています。自分の将来を考えはじめた生徒たちが、必要な資質を主体的に学ぶ場としても、親しみやすく居心地の良くなった図書館は最適な場といえるでしょう。自分に合った図書館の活用法を発見し、成長につなげてくれることを願っています。
所在地:静岡県
設計施工:(株)竹中工務店 基本計画・CM:(株)松田平田設計
図書館家具設計・レイアウト・配架指導:
図書館づくりと子どもの本の研究所 代表 平湯 文夫
「SCENE82」2015年7月発行より