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事例紹介:東京純心女子中学校・高等学校
図書館で司書と始める新しい学び
中学二年生後期後半、家庭科の授業。図書館で、約200冊の資料から、食材について調べる。資料を求めて席を立つ生徒の姿が印象的だ。
調べ学習の実践
東京純心女子中学校・高等学校では、ほぼすべての教科で図書館を活用している。例えば、中二後期前半の音楽の授業では、ベートーヴェンについて、調べたことをレポートする。ただし、授業はやみくもに本を用いることから始まらない。
まず、用紙の使い方に書き方、さらには著作権や引用の仕方まで、レポート作成を一から学んでいく。調べたことを書き出し、要約した後は、テーマを立てて、調べた事実から結論を導き出す。最後に、分かったことをまとめてレポートは完成だ。
図書館は教室の一部
音楽の授業で、歴史や文化を学び、更なる関心や理解を深め、調べたことを活用する力も身につけていく。教科の授業だけには止まらない、まさしく総合的な学習が展開されていく。
同校では、古くから読書の重要性や図書館の有効性を認め、授業に役立つ資料提供を行ってきた。しかし、インターネットの普及とともに、単に資料があるだけでは不十分だと考えるようになったという。調べることに加え、それを生かして、書いたり伝えたりすることも、図書館で支援できると。
中学校では、三年間を通して、図書館を使った授業のカリキュラムが組まれている。本に親しむことから始まり、調べごとに図書館を利用することが習慣化されていく。中三になると、公民の「時事スピーチ」に発展。これまで学んだことを生かして、テーマ決めから行い、10分間のスピーチを自己採点で締めくくる。
1986年の中学校設立時から専任司書を務める遊佐司書教諭は、重要なことは、図書館を使う枠組みをつくることだという。目標を立てて、教科を巻き込むことで、図書館が活用されるようになる。
大切にしたい図書館の雰囲気
1999年、新校舎の完成に合わせて、図書館の移設も行われた。三階に中学校図書館、二階が高校図書館となっている。中学生が委縮せず利用できるように、また、自習の多い高校生とは使い方が異なることなどから二つに分けられた。
訪れやすく、のびのびと利用できるように、図書館づくりは、親しみやすく使いやすい平湯モデルで行われた。展示型の書架も、本をアピールする力や、読みたい気持ちにさせる効果が大きく、移設後、生徒から「新しい本を買ったのでしょう」と聞かれるくらいに、隠れていた本にも気づいてもらえるようになったという。
本屋のような図書館
「自分が学生の頃の図書館とは全く違う」とは、国語の安東教諭。本屋のような雰囲気は敷居が低くて入りやすく、探したい本がすぐ見つかるように整理、工夫されているのでとても見やすいという。
学校図書館法には、図書館設置の目的が2つ明確に示されている。「教育課程の展開に寄与」と「健全な教養を育成」。同校ではそれぞれ「授業をバックアップ」、「読みたい、知りたい気持ちを育み応援する」と解釈。その通りに図書館が運営されていた。
東京純心女子中学校・高等学校
東京都八王子市
中学校・高等学校併設校
生徒数 中学校300 名、中学校10 クラス
【中学校図書館】
立地 3 階
面積 約270 ㎡
蔵書数 約3 万冊
専任司書教諭1 名
生徒一人あたりの年間貸出冊数 31.5 冊
3 年間で151 時間授業で使用
( 2014 年 3月末現在)
「こどもが変わる 学校が変わる 図書館づくり 第2版」2014年10月発刊より