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事例紹介:長崎南山学園中学校・高等学校
生徒と共に、利用される図書館に再生
浦上天主堂、平和公園をのぞむ高台に建つ長崎南山学園。2002年、学園創立50 周年を機に、利用者が一日数名の図書室の再生にとりかかった。
再生のカギは、学校を挙げた理解と協力
再生は、ハードとソフトの両面から5カ年計画で進められた。
実態調査から、他校と比べ、蔵書数や貸出冊数、利用者数などが、いずれも遅れていることが明らかになる。図書館の充実が早急に必要なことが、全職員と管理職の共通理解とされた。
こうして、図書予算の増額をはじめ、個人所有の本が職員からも寄贈されるなど、読書環境の充実が図られていく。
平湯モデルによるハードの再生
はじめに、図書室と自習室を隔てていた壁が撤去される。そして、入口が廊下まで拡げられ、5教室分の広さが確保された。また、閉架書庫が改修され、司書室も拡張。当初から、校舎の真ん中に図書室があり、立ち寄りやすい立地にあったのは幸運で、一層効果的であった。
そのほか、利用者の目線で、カウンターの高さが低くカットされるなど、使い勝手の向上が図られていく。展示型の書架が効果的に配置され、壁面に合わせた書架も設計された。掲示や展示も充実し、生徒を引きつけ、使いやすい図書館へと生まれ変わっていった。
生徒の意識を変える積極的な活用
ソフト面では、調べ学習をはじめ、研究発表会など、幅広く図書館を活用する機会が増やされた。生徒が図書館に近づき、足を運ぶ流れが自然と生まれていく。
また、図書館は利用する生徒が主体となって運営されていくべきという考えのもと、図書館で各種委員会活動などが積極的に行われ、より多くの生徒に利用されるようになっていった。
生徒と共に創り、生まれ変わる図書館
このほかにも、図書ボランティアによる「読み聞かせ」や「ストーリーテリング」などが開催され、生徒の読書に対する意識が確実に変わっていった。
文化祭では、図書館を地域開放し、作品なども展示。「先生がすすめる一冊の本」を紹介するなど、教師と生徒が一緒になり、再生が進められた。
こうした取り組みの結果、一日数人しか利用しなかった「図書室」が、一日の平均が140人以上と、県内でもトップクラスの利用率を誇る「図書館」へと変貌を遂げた
のである。貸出冊数も5年間で飛躍的に伸びることとなった。
図書館は運営次第で変わる生き物
現在、全校一斉の「朝の読書」を毎朝10分間実施している。また、地域にも開放して、英会話教室を開催するほか、保護者への貸出も行っている。
「図書館は生き物」とは、同校の松浦司書。利用してもらうことを目標に、生徒、教職員の声に耳を傾けて、運営次第で変わっていくという。
図書館は一部の生徒のための場所ではなく皆のもの。生まれ変わった図書館は、多くの生徒に利用されている。
図書館再生3つの柱
図書館を学校の中心に位置づけ、「学習・情報センター」としての機能を充実させる。
調べ学習を中心として、各教科の授業に対応できる蔵書の充実を図り、選書の見直し、レファレンスの強化を行う。
図書館を学校の文化面での拠点として位置づけ、各種委員会活動や発表会などを積極的に推進する。
長崎南山学園中学校・高等学校
長崎県長崎市
中学校・高等学校併設校(男子校)
生徒数 876 名、27 クラス
立地 3 階中央
面積 約5 教室分
蔵書数 約2.25 万冊
専任司書1 名
1 日の平均来館者 約140 名
中学校と高校で共用
「こどもが変わる 学校が変わる 図書館づくり 第2版」2014年10月発刊より