平湯文夫の研究所だより No.008
このふた月ほどで9つも図書館などのプランをしました。
正月の2日は、30歳から42歳まで教えた長崎北高校の同窓会。始まるとすぐ「A国立大学教授・理学博士B」なる名刺をさしだして、「読書感想文をほめていただき、私のために『結晶の科学』全10何巻(?)を学校図書館に買っていただいたのが大変嬉しかった」と挨拶された。にわかに高校生のイメージに結びつけられずめんくらったが、しだいにその名前も感想文のことも記憶によみがえってきた。熾烈な進学指導の高校の中での、図書係教諭の一コマになろうか。始まって、おそらく最初にきてくれたことを嬉しく思った。
1年ほど前には、教師になって最初に受持った生徒たちと一夜歓談したとき、「未熟なときで恥ずかしく申し訳ない」というと、「未熟なことは教師として不適格なことではありません」と慰められた。人生のフィニッシュを迎えて、生きてきたその時々の評価のようなこともやってみると、それはなかなかきびしい。
中1と小3の孫たちとのウィーンフィルはまずは大成功というべきか。中1の娘は、最初からしっかり聴けたようで、聴衆も一体となったラデツキー行進曲など驚きの体験だったようだ。小3の男の子は、第1部の50分ほど、いっこうにのれない様子でおちつかなかったが、根気よく待つことにした。
ところが、2部が始まるや、リズムにのりはじめて、次第に全身でもうのりまくった。まわりに申し訳なかったが、手を背中にまわして押さえるくらいにして、手を動かすのはそのままさせてやった。
ウィーンフィルの、「音楽はまず楽しくなくっちゃ」という小学生までとりこんでしまうサービス精神には敬服。日本のクラシックはしかつめらしいから、演歌やカラオケに溺れることになるのじゃないか。
このふた月ほど、家庭文庫の二つまで加えると9館も図書館のプランをやってしまった。これらのうち、ボツになるのも2・3館はあろうけれど、85点以上の合格点でできあがるのも何館かあるはずで楽しみだ。
2か月に9館は、おそらくこれまでにない数だが、それは、平湯モデルの図書館が実績をあげてきたことであり、仕事しやすい態勢がととのってきたからでもある。
この2か月ほど、トンカチもずいぶんやった。新居の棚やテーブルなど、購入の時は、なるべくフレームまでにとどめおいてもらって、こまかなところは、自分できめこまかく手づくりしていくことにしたのだ。
キッチンも仕事場も、暮らしながら、仕事をしながら、どうしたら暮らしやすくなるか、仕事がしやすくなるか、ぬくもりのある部屋にできるか、引っこし以来考えてきた。
そしてそれらのものが、平湯モデルをつくっている木工所で拾い集めてきた端材を主にして、近くのホームセンターや百円ショップで最小限買い足して、どうやったらつくれるか考えながらつくるのは実に楽しい。それはそのまま、平湯モデルを開発し、バージョンアップしていくための感性をみがき、テクニックを蓄えていくことになる。生来こういうことがほんとにすきなのだ。なんでも好きでなきゃいいものはできない。