平湯文夫の研究所だより No.006
熊本・岡山・鳥取・島根・山口などへ
この春以来、熊本のいくつもの学校や町から図書館の増改築や改修の相談をうけながら、なかなか行けないでいたので、思いきって出かけることにしました。
1日目は3つの高校図書館を。それぞれ、学校司書や図書主任の先生が平湯モデルをとり入れようと事務長さんなどととりくまれながら、いまひとつというところのようなのでお手伝いすることにしました。それぞれそれなりに、これまでとちがう学校図書館が生まれそうです。
熊本市では、3年前120校ほどある市立の小中学校全校に、臨採ながら学校司書が配置されました。この運動をリードしたのは、女性の児童文学作家のAさんですが、氏はこの春の市議選で当選され市議会議員の立場で諸改革にあたられることとなりました。全国の仲間たちから喝采が聞こえてきそうな快挙ですね。
そのA氏からも「学校図書館のAとしても全力でとりくみたい。学校図書館を生きかえらせるには、楽しくて、機能的な学校図書館にしなくては・・・・。やりましょう」という頼もしい電話がありました。
2日目は、図書館の増築がきまったB町へ。午前中、町立図書館の現場や学校図書館を訪ね、午後、図書館協議会のメンバーを中心に、わが国の図書館のうごきや私の図書館づくりについてスライドトークをし、そのあと話し合い。20年前からのおつきあいのC氏が館長で、館員や住民の方たちが三日月町図書館を幾度も訪ねて、ぜひ私にプランをということになったとか。熱心な住民の方たちは、評判の図書館はたいてい訪ねているけれど、リピートしているのは三日月だけですとは嬉しい話。
帰るまもなく、先月会った岡山の彼女から、「助役さんや教委の事務局長さんに、平湯さんの話をきいていただける約束をとりつけました。なるべく早くきていただけるとありがたいです」ということなので、思いきって出かけることにしました。町議をしておられる若いお父さんもいっしょに迎えてくだり、1日おつきあいをして、生き方も考え方も実にしっかりした方だということが分かりました。
同じような計画の進むもう一つの町からも担当者がわざわざ出席してくださって、例によって「わが国の図書館のうごきと、せっかくこれからつくられるのなら、こんな住民に喜ばれるものをつくりましょう」という私のミニスライドトークを。「どこが主催するの?」という私の問いに、「私がやります」ときっぱり答えた彼女は、開会の挨拶から最後のしめくくりまでみごとにやりとげました。大人たちは、こんな若者たちの、いいことをしようとする純粋でいちずなやる気を、なまじ大人の分別で制止したりなどしないで、手を貸して背中を押してやるようにすれば、世の中はもっとよくなっていくのだと思いました。
そのあと、中国山脈を越えて鳥取県米子市へ。先月鳥取市で相談をうけた米子市立D小学校とE小学校へ。鳥取市と共に全校に司書の配置された米子市の両校の学校図書館は共に生きいきとしていて校長先生も熱心。
あと、山陰線で、出雲空港のある島根県の斐川町へ。「九州・沖縄図書館づくりセミナー」に20年間共にとりくんだ白根一夫さんが4年をかけて開館したばかりの斐川町立図書館の見学と激励に。
ほんとうにみごと。日本の建築家の建てた図書館でもっとも美しくかつやさしい図書館ではないでしょうか。満を持しての白根さんとのとり合わせでできたものでしょう。全国各地のほんとに真剣な図書館員たちにこんな白根さんのような機会を与えなければならないのだと思いました。
さらに山陰線をのりついで、これも開館したばかりの山口市立図書館へ。長い市民運動によってできた図書館でありながら、結局市民を受け入れぬままできてしまったのではなかったか。やさしさもぬくもりも感じられない、斐川町の図書館と全く対象的な図書館をつづけて見ることになってしまいました。やはり市民の図書館は、図書館のことをよく知り、市民をほんとに大切に思い、その声をよくきく、準備室長と建築家によってつくってもらわなければならないとあらためて思ったことでした。
これでいよいよ県都で図書館のないのはわが長崎市だけとなってしまいました。