平湯文夫の研究所だより No.100
4人の学校司書と4時間半もおしゃべりしました。
学校司書の1人に「おしゃべりにいらっしゃい」と声をかけたら、4人でやってきて4時間半も楽しくおしゃべりしました。30歳から50歳ほども離れていても、時のたつのも忘れて、よくおしゃべりできたと貴い発見でした。講義とか、研修とか、講演とか、一方的にきいてもらうことばかりやってきたのがいけなかったのだと思いました。近年、学校図書館の手づくり改修でいっしょに作業もずいぶんやりましたが、それさえ、限られた時間に、私がたてたプランに従って一方的に進めていくことが多かったと思います。
話は、平湯モデルの「優しさ」、「機能性」から自然に入って、私から図書館学を教わった卒業生も、初体面の人も、終始ほんとうにいっしょに語りあえたと思いました。まず、感性の大切さが、私からでなく、初対面の人が出たのもよかった。
私が、研修会などで話してきた、「半世紀以上の歴史を経て、今、やっと学校司書の配置が始まったが、身分は非正規、学期雇用、何校もかけもちで、生活給にほど遠い、大変な実状。これは、1年や5年でにわかに改善できるものではありません。しかし、ここまできたら確実に進んでいきます。なにが進めるのか。「学校司書」がいたら、確かに子どもたちが変わる、学校が変わるという、目に見える実績をみなさんがつくりあげることです。それが、市民を動かし、議員さんたちを動かし、行政を動かしていくのです。がんばってください。あなたたちの時代にもかなりよくなるし、次の時代には、いつか必ず、専門、専任、正規の3Sになります」と言ってきたのを、しっかり覚えていてくれたことをとても嬉しく思いました。そして、私がいいつづけてきたことは、「学校図書館をよくするほんとうのノウハウを身につけて、子どもたちの利用を確実にふやしていくことと、学校図書館の歴史を学び、しっかりした展望をもって、自信をもって仕事をつづけていくことです」ということでした。とてもいいおしゃべり会でした。
山田洋次監督の長崎原爆をあつかった映画「母と暮せば」を見ました。
山田監督の映画はどれも楽しい。人間のとらえ方が深いし、映画づくりが実にていねいでうまい。暗い戦争の時代を扱った「母(かあ)べえ」などでも最後がすごい。「幸せの黄色いハンカチーフ」などもみごとだし、役者の使い方も桃井かおりの演技が秀逸。
どれもいい作品なのに、「戦争ものは暗い」と避けられるのは残念。このテーマだけに、おもしろくしにくいところがあり、苦労が見えるようでしたが、ていねいにつくられた力作です。戦後70年のしめくくりに、ぜひ広く見ていただきたいものです。
8歳で地獄を見る戦争体験をした従妹の話をきく機会をもちました。
3年前のこの「たより」の55号でふれたことです。当人夫妻に最も身近かな2組の夫婦で訪ねました。太平洋戦争末期、米軍のマニラ上陸を前に、土足で踏みこんできた日本兵に追いたてられて、ジャングルをはだしで逃げまどい、父は爆撃で死に、3人の弟妹は餓え死にしたというのですから「地獄を見た」というほかありません。それが、8歳(小学3年)の少女の体験ですよ。通して話したことはなかったということで、喜んでもらえたはずですし、叔父たちへの供養もできたかと思いました。
パリ連続テロで、大変なことになりました。フランス大統領はうろたえています。正常の判断力のある人ならだれにも分かっていたことです。テロを力で壊滅させることなどできるはずがありません。アフガン、イラクを経験し、ローン・ウルフ(一匹狼)が始まってもまだ気づいていません。政治家たちはどこまで愚かなのか。これから確実にはてしもなく広がっていくでしょう。近年、日本の信頼や信望は世界に浸透していたことを知らされることしきりです。先人たちの賢明な努力の賜物です。ISも日本は標的に入れてなかった。それが、この安保法制と有志連合支持によって一転しました。ことここに至っても、確信犯の総理は全く分かりません。あの太平洋戦争の指導者の中枢にいながらA級戦犯を免れ、「名にかえてこのみいくさの正しさを来世までも語り残さむ」と詠んだ祖父岸信介元首相を最も尊敬して生きている人です。
集まった私たち6人の内3人は、太平洋戦争で幼くして父を失いました。愚劣な指導者たちによって。再び同じ道をたどる可能性は、この政権によって一気に高まりました。2院制の趣旨も無視して、なりふりもかまわず衆参同時選挙で1人勝ちをねらっているとか。
新国立競技場の新しい設計、2案ザハ案よりぐっとすてきです。
先の採用案が神宮外苑の森に全くふさわしくないと書きました。新しい案は、二つとも、「杜のスタジアム」と名づけられて、外苑の森との調和を第1に考え、木を使い、すてきです。平湯モデルに近づいてきているようです。人間はどんなに著名でも、頭脳明晰でも愚かだし、歳をとっても未熟です。謙虚が最高の美徳といわれる所以(ゆえん)でしょう。
先に書いたことに訂正があります。都心部で、終日開放の大きな公園は、神宮外苑と上野公園ぐらいではないかと書きましたが、神宮の森の東隣りの代々木公園も終日開放のすてきな公園です。JR原宿駅を出て神宮橋を渡ったところに南の入口があります。