平湯文夫の研究所だより No.91
平湯モデルの書架が地震に大変強いことが証明されました。
2年前、大学の建築学科で平湯モデルのメインとなる床置き書架の耐震テストをしてもらいました。倒れにくくて、本が落ちにくく、壊れにくいことがはっきりしました。
今回、どうせなら、高層建築の耐震性などを専門に検査する最高レベルのところで実証していただこうということになり、その結果の報告を受けに行きました。
まず倒れにくいのは、視線をさえぎらぬ高さに低くおさえてあり、底辺が広く重心が低いからです。本が落ちないのは棚板を8度傾けてあることと、床に固定しないのでわずかに動くことで免震となっているからです。壊れにくいのは、ボルトで組みたてただけのスチール書架や棚板をダボにのせただけの木製書架とちがって、中仕切りまで加えて、すべてボンドとダボとビスでしっかりかためているのですから当然のことです。本が落ちにくくて避難経路をふさぐことがないのは大変重要なことです。余震をはじめ、地震が日常化している地域では、後片づけの手間がかからないのはありがたいともききました。いかにも頑丈そうな、床に固定して、上部を鉄でつないだスチール書架が、東日本大震災でぐしゃぐしゃになった写真が私の手元にあります。
私は、特に地震を想定しながら平湯モデルを設計したわけではありませんが、直立で2メートルもある高書架はとうてい受け入れられなくて、右の写真のようなやさしい形の書架になりました。機能とデザインは相容れないもののようなとらえ方をする人もいますが、平湯モデルは、機能の極に美しさがあるという柳宗悦の思想を元にしていますから、私がデザインしたものが、耐震性という機能もしっかり備えていたことが証明されたのは大変嬉しい思いでした。
「どうしたら親しみがもてて心地よいものがつくれるか」というのが、平湯モデル開発の基本姿勢ですから、背丈に余る直立直角の書架が受け入れられないのは当然のことです。
同席の、おそらく構造工学で学位をとられた方々も幾人かおられる場で、このことを結びのように話させていただいて、うなづいていただけたように思いました。
くり返しになりますが、平湯モデルのメインとなる床置き書架は、倒れたり壊れたりすることはまずないと言いきっていいでしょう。本も落ちにくいので、子どもたちが避難しやすく、最も安全な書架ということになります。
壁面高書架だけは、傾斜がなく、奥行きも浅いので本が落ちやすいのは今後の課題となります。本が落ちやすいことは、書架ごと倒れる心配はなくなることにはなります。
『ラオス・山の村に図書館ができた』というすてきな本がでました。
この話は、ラオスの首都ビエンチャンから航空機で北へ飛んで、そこからまた、ガタゴトバスで3,4時間走り、さらに30キロの、もうベトナムに近い、標高1300米、人口500名ほどの小さな村に、日本人の女性が図書館をつくったという話です。高校生のとき図書館づくりのまねごとをして以来、私の一生は図書館づくりの一生だったようなものですから、図書館づくりの話は大好きです。この本は、福音館から出たばかりですが、福音館の松居直さんのご長男の友さんも、フィリッピン南部のミンダナオ島で、「ミンダナオ子ども図書館」をつくり、そこを拠点に子どもたちのための教育や福祉や医療などとてつもない活動をしておられます。その友さんが、先日、テレビの「こんなところで日本人が・・・」(?)で放映されたそうです。見たかった。