研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.89


平湯モデルを文句なしに喜んでくれるのは子どもたちをはじめ利用者です。

 保育園児から、小中高校生まで、手ばなしで喜んでくれるのは、なにより嬉しいことです。新しい図書館に入るなりみんなで躍りだしたという小学校まであります。子どもたちだけでなく、公共図書館の利用者にもまず例外なしに喜んでもらっていると思っています。図書館は、利用者のためにあるのですから、利用者に喜んでもらうことがなによりです。喜んでもらうだけでなく、例外なく、利用が格段に伸びているのです。


ところが、ベテランの図書館員の方たちにはなかなか受け入れてもらえません。

 なにより、図書館員の方たちのイニシャチブでとり入れてもらった公共図書館は、まだ全国に1館もなさそうです。公共図書館にもたくさんとり入れてもらっていますが、それはみな、新しく図書館ができたところで、ベテランの図書館員がいなかったところばかりです。そしてどこも利用実績でベテランの図書館のいる図書館を軽々と抜いているのですからおもしろいと思います。
 学校図書館では、図書館員が平湯モデルをとり入れて利用を大きく伸ばして喜んでいただいているところがたくさんあります。ところが、とても熱心な学校司書で、平湯モデルにも関心をもちつづけてくださっていた方が、いよいよとり入れるだんになると、大切なところを、従来のものにもどして入れて、せっかくの平湯モデルの良さを台無しにされることもあります。


利用者に喜ばれるものがどうして図書館員に受け入れられないのか。

 「使い慣れてきたものにとらわれてしまっておられる」ということでしょうか。まず、「棚板固定」と聞いただけで、「それは話にならない」と、ハナから受けつけない人に、直接、間接たくさん出会いました。「棚板固定」は平湯モデル書架のもっとも重要なものの一つで、図書館関係の研究誌はじめいろいろな機会にずいぶん早くからくりかえして説いていることです。さらに、棚板固定の平湯モデルが、各地で格段の実績をあげているというのに、学ぼうともしないで、ハナから「話にならない」というのは悲しいことです。パラダイムが変わることに対応できない人には進歩はありません。


平湯モデルに対する感性と熱意にも格段の差があるようです。

 印刷物を見ただけで、なんとしてもこれをとり入れようと懸命になってくださる方があるかと思うと、私のスライドトークのライブを見ても、聞いても、平湯モデルの実物の図書館を見ても、あまり感じない方もおられるようです。行政や私学の事務の方に多いようです。
 行政の施設計画の担当者は、住民の貴重な税金を預かって、これから50年も、今の小学生の孫の代までも使いつづける学校図書館の計画を任されているというのに、しかも、今、学校図書館が大きく変わろうとしているのに、学校図書館計画の出版物にもネットにも一切学ぼうとせず、設計事務所に丸投げというのがほとんどのようです。全国の新、改築の学校図書館を見れば分かります。
 公立と私立でも、例外は別として、格段のちがいがあります。この学校図書館の世紀の変わり目に、格段に良いものをとり入れるか、従来のひどいままのものをつくるかは、私学では、死活にかかわるとみておられるようです。長崎では、この数年で私学の3校が次々と平湯モデルをとり入れておられます。
 それでも、行政にも、稀には、ネットで平湯モデルを探しあてて私に電話をかけてこられ、勉強のため自費で買った出版物が百冊を越えたという担当者もおられるから嬉しくなります。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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