平湯文夫の研究所だより No.83
東海地区のできあがった2校の図書館を訪ねました。
まず、開校して3か月の新設の小学校へ。開館準備の時、固定棚にクレームが出たということでしたが、訪ねてみると、校長先生と教委の担当者と学校司書が待っておられて、平湯モデルに喜んでおられる話ばかりで拍子ぬけがして嬉しくなりました。
まず校長先生が、「図書室を利用する子どもたちの様子のりっぱさに感心しています。たくさんの学校を経験してきましたが初めての経験です」とおっしゃる。まだ配置がととのわず、週に1日しか来れない学校司書は、「1週間ぶりに来る書棚の本が乱れていないのがふしぎです」といわれました。
私がよく利用する、朝食が無料サービスのホテルのテーブルには、小さな籠に不織布のフキンが用意してあり、こぼしたものがすぐふけてとても気持ちがいいです。いつだったか、「赤ちゃん絵本を置く平湯モデルを入れてから、ちらかることがなくなりました。片づけるのが楽しいみたいですよ」と言われたことがあります。
なぜ木にこだわったか。塗装にこだわったか。色に、アールに、斜めに、高さに、厚さに、中仕切りに、レイアウトに・・・・。すべてが繊細な子どもの感性をそっくりつつみこむようにとこだわりぬいてきたことが、まちがいでなかったと思いました。そばにいた仲間が話してくれました。かなりすさんだ高校に、なんとしてもと平湯モデルを入れてくれた司書に、納品された机を前にして、「1週間もしないうちにこれよ」とカッターでえぐるまねをしてみせた同僚がいたそうですが、1年たっても、全く無傷だったという話です。
そのあと、やはり東海地区の全面改築の私立中高校の据えつけの現場を訪ねました。
やはり校長先生が待ち受けておられて、私が直々に訪ねたことを喜ばれ、現場で、「先生のプランの意図をしっかり話してください。生徒たちに話してあげなければなりません」と、館内で十分時間をとって私の話をきいいてくださいました。
また、据えつけ完了ま近かの図書館の前を通る中高校生たちが、それぞれに示す喜びようを直接見ることができたのも嬉しいことでした。「入ってもいいですか」とことわり、次々と入ってきて、ほんとに嬉しそうでした。
東京A区の学校事務の方たちの研修会に招かれました。
学校事務の方たちには、もうずいぶん前、長崎の諫早市に招かれたことがありますが、しばらくぶりです。事務職員の方たちが学校図書館の施設に関心をもっていただいているとは嬉しいことです。
せっかくならと、千葉県市川市の国府台女子学院の小中高校を見学しての研修会にしていただきました。区立小中学校の現状との差に驚かれたようですが、学校図書館を生きかえらせていくことに触発された方たちは少なくなかったようでした。
落成式以来1年ぶりに訪ねましたが、まず、学園のトップである学園長先生が待っていて、いい図書館をつくっていただいたと感謝していただき、小中高、3人の司書教諭(司書でもある)の先生方も、実際使ってみてのよさを話しつづけてくださったのは嬉しいことでした。
研修会にも、見学、講義を通して、3人ともずっと参加してくださって、私の話の裏づけを、あらかじめ示しあわせでもしたように、話してくださったのはなによりありがたいことでした。
父の遺品の整理をしていると、上のようなものが出てきました。今から97年前、36歳の田舎の小学校長が、学事視察のため、上 海、南京、香港、マニラを40日間も出張を命ぜられているのです。出張ですから、40日間分、旅費も出たのでしょうか。弟がマニラでホテルを経営していましたから、そこに長くいて、打切り旅費だったのかもしれません。それにしても、留守中の学校経営はどうしたのでしょうか。父はよく、旅をしろ、そして外国をまわれと言っていましたが、実体験に基くものだったのです。また、学校以外の広い世間の経験をしろとも言っていました。存命中、いろいろ語り合えなかったことが残念です。