平湯文夫の研究所だより No.75
全国の小学校の先生方が集まってくる筑波大附属小図書館の改修をしました。
今回は、予算の都合で入口だけしかできなかったのですが、入口だけで効果は絶大だということ、また、作ってあげた全体改修プランをもとに、手づくりで書架を低くしただけで、図書館がすっかりかわったという、学校司書さんの雑誌記事などを読んで訪ねてみました。行ってみて、話もきいて、本当だと分かりました。常々、玄関は大事だ、書架を低くするだけで図書館はすっかり変わると言いつづけてきたことで嬉しいことです。
子どもたちのためはもちろん、全国から何千人も、年間、幾度も集まってこられる先生方のためにも、図書館をよくしたいと、何年かに分けて改修していかれる計画のようですが、つくってあげた全体計画に促されて、まず、私の『3千円から3万円でできる学校図書館の手づくり改修法』も参考に、先生たちでできるところから、児童たちまで加わって、図書館をすっかり変えてしまったというのですから嬉しくなりました。
2年目、3年目がとりかかりやすいように、新たに、いくつかのブロックに分けて改修案をつくってあげることを約束して帰りました。
6月に紹介した長野県の佐久穂小中学校図書館の据えつけが終わりました。
校舎の中心にある昇降口の上に図書館を配して、北に浅間山、南に八ガ岳を望むように設計されているところに、この町と設計者の、この学校建築と図書館にかける思いがうかがえます。
1週間ほど前に初冠雪したときく浅間はすばらしかった。同じ敷地の中学がこの冬休みに引っこし作業をして、1月の新学期から移ってくるという。そして、1年3か月後に、町内の残った中学1校と、小学校3校が移ってきて、完了するそうです。中学校2校、小学校3校、合わせて5校が使う図書館としても、一応十分な、あるいは全国でも最大規模の学校図書館ができたかと思います。5校各校に1万冊ずつある蔵書が少し整理されて、ここに集められたら壮観でしょう。さらに、公立学校ではほとんど例のない学校司書の複数あるいは3人配置が実現でもしたら、すばらしい学校図書館になるでしょう。
引っこしがおちついたところで、町外にも呼びかけて、この図書館の計画、設計の意図や、それを生かした運営の方法、そして、近年の日本の学校図書館のうごきなどについて、私の話をきく機会も考えていていただいているようでありがたいことです。
4日間の据えつけ工事の、後半の2日間をいっしょして心に残ったことに、職人さんたちの働きぶりがありました。終始懸命で、ていねいで、念がいって、手ぎわがよく、感動するほどでした。これでは、高級ホテル、豪華客船並み。小中学生のガキどもが使うところですから、もっとざっとでいいですよ」というと、「そう言われても、私たちはこうしかできないのです」と言われてしまいました。だから、平湯モデルの美しい図書館家具は、マジックなどで汚されたことも、カッターで彫られたこともないのだと思いました。本当にいいものは、子どもたちは大切に使ってくれると信じていたことの裏づけがえられた思いです。
「平湯モデルは、手がこんでいて、大変でしょう」というと、「こういうのが楽しいのです」と言われました」。家具製作所を訪ねると、社長さんや職人さんに、「訪ねていただいて嬉しいです。お会いしたいとずっと思っていました」などと幾度も言われたことがあります。木そのものをほんとうに生かした本物の木製家具を作りたいと思っておられる方が少なくないことを感じます。
職人さんたちは、地位も名も、あまり縁がなさそうなのに、ほんとにみちたりたように、いい顔をしておられました。ほんとにりっぱに生きている人たちだと思いながら、埼玉へ帰って行かれるのを見送りました。