研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.064


平湯モデル、デザイン、美、真実、柳宗悦、民芸、用の美(3号前のつづき)

 デザインというのは、人のくらしを豊かにするものだと思っています。民芸学をうちたてた柳宗悦の「用の美」が正にそうで、「用」とは、機能であり、役立つとか使いやすいとか、さらに安価で作りやすいことまでも含んだことばではないかと思います。私はこの柳宗悦の思想に出会って、それをもとに平湯モデルにとりくんでいます。


 具体的にのべてみましょう。「丸いテーブルは人を仲良くする」といわれます。四角や長四角のテーブルにかけているのとははっきりちがうふしぎな力がはたらくと私は信じています。だから図書館にも保育園などの絵本の部屋にも必ず丸テーブルをおきます。右の写真や図を見ながら読んでください。
 楕円は、正円と並んで美しく優しい形です。図書館に入ったところの展示台はこの形しかないと思っています。横に広がったかたちで、図書館にやってくる人たちすべてに、テーマ展示や季節の本や新着書などディスプレイします。通路をさえぎるからと90度回転させたところがいくつかありましたが、入館してくる人たちの通路にたちはだかって、ぜひ目をとめていただきたいのが展示台なのですから、それは困ります。
 平湯モデルの長四角テーブルは、長い辺にゆるいアールをつけています。このわずかなアールが、ここにかける人たち同士の心をかよわせると私は思っていす。直線だけの長四角テーブルでは生じないふしぎなはたらきです。長い辺は直線のままで、短い辺にアールをつけたのはよくみかけますが、無意味なことだと思います。
 カウンターは、また、右のバナナ形しかないと思っています。この形は、入館してくる人たちから、奥にいる人たちにまで、前方180度、全方位で、向かいあっているのです。ある学校司書が言ってくれました。「このカウンターに座っていると、前に立つ幾人もの生徒たちみんなが、私に迫ってくるように感じられて、たまらなくいい気分になります。これまで経験したことのないふしぎなカウンターです」と。立っている司書は一人でも、カウンターそのものが、利用者すべてに全方位で向かっていることは大切なことです。
 学校図書館の、従来のカウンターはどうしたことか、例外ないほどL字形ばかりです。2方向を向いているようで、どちらもだれにも向かっていない死んだかたちだと思っています。その上、900、1000ミリと高いカウンターは、人を寄せつけないバリケードに見えてなりません。こんなかたちを、許せないと見る感性こそ、図書館員にはまず大切なことだと思います。
 図書館の入口はまた、右の写真のように、大きく開いて、中が見えて、上部にアールがついていてはじめて、人を迎え入れるかたちだと思っています。
 デザインとは、こういうものだと私は思っています。平湯モデルの全アイテムの家具とレイアウトにこのことをさらに深めていきたいとつとめています。
 ある神学書とかに、神は細部に宿り給ふ、とあるそうです。


丸いテーブルは人を仲良くします。


 楕円は正円と共に美しくして優しく、横に広がっていて、展示台にはこのかたちしかありません。


 この長四角テーブルの長辺のアールが掛ける人の心を通わせます。


 このかたちは、図書館に入ってくる人から奥にいる人まで、全方位で向かいあっています。


 入口のドアは、透明で、左右に広く開いて、上部にアールがついていて、はじめて人を迎えるかちになります。


四国の公立の小中共用の学校図書館に6教室分の広いのができました。

鹿児島をまわって四国へ、すてきな公立小中学校のすばらしい図書館の据えつけに行ってきました。開館してから写真もいっしょに報告します。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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