平湯文夫の研究所だより No.058
長崎市の学校図書館は大きく前進しそうです。
長崎市の小中学校では、3年前、4名の学校司書を配置して、2年間のモデル事業を始めました。その2年の実績をもとに、昨年度は18名にふやされたのでしたが、今年は一挙に36名にふやされました。全市に111校の小中学校がある中、36の中学校区に、とりあえず1人ずつ置いて、拠点校を中心に校区内の学校もみてもらおうというもののようです。
この4年間をみるだけでも、行政の確かな意志と計画性が感じられます。今年は、たまたま、はじめて学校司書のための交付税が設けられた年にあたりましたが、それにもよらない、市独自のもののようなのです。これは、なんとしても成功させなければなりません。
非正規の給与は、生活給にはほど遠い額ですが、36名の総額は大きい。その大きい支出をはるかに越えるものが、長崎市の子どもたちに与えられることを、目に見えるかたちで示すことができたら、この3校に1名が、遠からず111校全校に1名ずつになるとさえ、感じさせるところがあります。
そのために必要なものはなにか。まず、必ずしも学校司書として働ける知識も経験も十分な者ばかりでないうえに、1人職場で、学ぶ先輩も、共に働く同僚もいない学校司書たちに、仕事のノウハウを得させること。もう一つは、これまで、存在したことがなく、校長先生はじめ、先生方全員に、対応にさえとまどわせている学校司書を、例えば、養護教諭のように、子どもたちにも先生方にも、なくてはならぬ存在として、しっかり存在させることです。全国各地に配置の進む学校司書たちにとって、いちばんつらいことは、自分が学校の中にしっかり存在させられていないことだからです。大切なことは、これまで存在したことがなく、また1人職場という学校司書の特殊性の認識です。
学校図書館支援室の設置を求める市議会を傍聴しました。
自治体内の学校図書館が、教育活動に十分な役割を果たすには、十分な資料、情報の提供のうえからも、1人職場である学校司書たちの研修、協力態勢づくりのうえからも必要不可欠のものである、この「支援室」設置についての質問があるときいて、市議会を傍聴しました。もう10年ほども前、120余校の全熊本市立小中学校に学校司書の配置が決まった熊本市議会を、運動の中心だった児童文学作家のたつみや章さんたちと傍聴したことがありますが、長崎市議会は初体験です。長崎市の学校図書館が、ほんとにうごきだした感じです。
諫早市の小中学校全42校にも学校司書が配置されます。
諫早市でもねばり強く着実な運動がつづけられてきましたが、ついに2学期から、これまでの4名から一挙に全42校配置となったようです。大村市も今年から2名配置と聞いていますので、長崎県は大躍進です。
学校図書館を考える全国連絡会第16回集会に参加。
10数年前の石川県旧松任市の学校司書配置はめざましく、県下にも広がりを見せましたが、それでも動かなかった県都金沢市の大きなうごきの報告は圧巻でした。支援室づくりもまた示唆に富むものでした。全国どこでも、ねばり強い努力は必ず実っています。