平湯文夫の研究所だより No.055
妻が毎週欠かさず観る「題名のない音楽会」の佐渡裕のコンサートに行く。
最後のアンコール曲の「星条旗よ永遠なれ」には、あらかじめ知らせてあったらしく、楽器をもった聴衆が、大勢ステージにあがって、楽団といっしょに演奏しました。その中のまだ学齢前にみえる1人の男の子は楽器を持たず指揮台に登りました。佐渡裕は、「この子、なんと言ったと思います?『楽器は持ってこなかったので、指揮してもいいですか』と言うんですよ。指揮ぐらいだれでもできると思ってる」と満足そうでした。その子の指揮ぶりのみごとなこと。
戦後、フィリッピンから引き揚げて一緒に暮らしていた1歳下の従妹と会う。
1時間に1本のバスを乗り継いで、年に1,2度の郷里の墓参りをして雲仙へ。雲仙では、これも毎年1度の学校図書館の仲間たちとの楽しい集い。今年は、レクレーションで中学以来60数年ぶりのテニスにも挑戦。つかれはてたが温泉につかってさわやか。翌日筋肉痛がなかったのは嬉しい。
島原へくだって、7年前から互いに願っていた従妹と会う。有名なマッカーサーの「I shall return」で、ジャングルを逃げまどうなか、家族を失い身一つで帰ってきた。写真も持ち帰れなかったはずと、探して持っていったが、その内のかなりは、嫁ぐとき、私の父が揃えて渡してくれたとのこと。
私が小五、従妹が小四のときからのことで記憶もおぼろだが、身内の4軒へあずけられながら育ったという。よきつれあいと子たち、孫たちにも恵まれてよかったが、ほんとうによく生きぬいたと思う。互いに歳をとり、身内も少なくなっていくなか、立ち入ったことまできいてあげられただけでも喜んでもらえたのではないかと安堵の思いだった。
「3千円から3万円でできる学校図書館の手づくり改修法」を行政で。
市有林の檜の間伐材を使い、実績をもつ庁務員さんや学校司書や図書係の先生方もいっしょに、「3千円から3万円でできる学校図書館の手づくり改修法」のノウハウで、学校図書館を生きかえらせようと行政でとりくんでいただくところが現れて準備にかかっています。木材を見せてもらったり、庁務員さんの仕事場や作品を見せてもらいましたが、驚きました。
自費で買ったという工具は2百万円を越えるとみましたし、時間はほとんど土日など使われるというし、仲間も数名おられるという。奇特というほかない。夏休みに計画している研修会が楽しみです。
京都聖母学院小の図書委員から礼状が届きました。
開館するとすぐ、6年生の図書委員14名から、私の似顔絵まで添えた「すてきな図書館をありがとうございました」というお礼状を綴じたものが届きました。司書さんからの便りに、「平湯モデルの意図など、まだだれも説明していないのに、もう全部分かってくれているのに驚きました」と書いてありました。
部屋の広さは元のまま、本は少なくしたのに、「ずっと広くなった」「ゆったりできる」「開放的だ」「本がふえた」「探しやすくなった」「ほのかな木のにおいがして自然の中にいるようだ」「本が読みやすい」「木の色やピンクの内装がいい」「ドーナツベンチが気に入っています」などなど。子どもは本当に神様です。