研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.039


お勧めの本を一冊お願いします。

 出張のリムジンバスで、40年も前に教えた航空会社の社長と乗り合わせた。
厚いちくま文庫を手にした彼は、「先生の授業で国語が好きになりずっと本を読み続けています」と嬉しいことを言ってくれて、「ぜひお勧めの本を一冊」という。60歳に近く、社長になった今もバスの中でも本を手離さず、もしや、会う人ごとに「お勧めの本を」と言っているのかもしれないと、りっぱだと思った。


大型書店の児童書売場に平湯モデルが。

 北から南へ、6日間の出張の最終日、さる県都の大型書店に寄った。児童書 売り場に1個置いてみた平湯モデルの書架の本がよく売れて、社長さんが「こ れは魔法の棚だ」と言っておられると聞いたからだ。鹿児島国際大学の図書館 学の種村教授など、私の図書館プランを「平湯マジック」と言ってくれている人も幾人かいるが、書店では始めてのことである。
 会ってみると、ほんとに本気で、児童書売り場を、クリスマスセールにまにあうよう、全部平湯モデルにできないか、プランしてみてほしいと頼まれた。
 近年、大型書店で、棚をすべて木製にしているところもいくつか見かけるが、 図書館の書架同様、収納型でいかにもごっつい。平湯モデルだったら断然売れるはずと思い続けてきたことだったので嬉しい。


「わかば子ども図書館」が南山小学校図書館に蘇りました。

 わが研究所付設であり、妻の図書館であった「わかばこどもとしょかん」が閉館して、近くの南山小学校図書館に蘇りました。
1980年、近くのスーパー「ジョイフルサン」に協力を求められて、店の3階に開館し、年間、8万冊というギネスブックものの貸し出しをした実績も持ち、1万人近い子どもたちに利用された子ども図書館でしたが、私たちも寄る年波で、30周年を機に閉館することにしました。
 ただ閉館するのでは淋しいので、近くの縁りもある南山小学校の図書館に、 平湯モデルの家具もいっしょに差し上げることにして、手づくり図書館のお仲間の竹村先生と、すてきな図書館にするお手伝いをすることにしました。11月27・28日の土・日曜を使って改修することにしたのですが、長崎市と周辺の学校司書や係の先生方も案内しました。
 校長先生自ら、2トントラックを運転して、本や家具を運ばれ、総出でかかって、2日間で、大よそができあがりました。
 この仕事で大変だったのは、6千冊ほどの蔵書から4千冊ほどを選んでデータ入力などの整理作業でした。それは、休みの日や勤務後の時間を使った、すべてボランティアの協力で、9月からの3か月を要しました。
 その間の協働作業をつぶさに見ていて、お一人おひとりが、新しい学校図館をいっしょにつくりあげる喜びで一体となっていることに胸があつくなるほどでした。2日目の夕方、新しい図書館が大よそ出来あがったときには、大きな達成感をみんなでほんとに共有できたと感じました。
 これこそ、前川恒雄さんがおっしゃる「本と図書館の力」なのだと思ったことです。とりわけ、子どもたちに喜んでもらえる図書館をつくることは、文句なしに楽しくて力の入る仕事なのだと思いました。
 次回は、子どもたちであふれる図書館の大きな写真をご覧に入れます。


「わかばこどもとしょかん」には、本も家具もほとんどなくなったところ。


南山小へあげるにはちょっと傷みすぎたものをぬき出していた中から、大好きだった本を探し出して持てるだけ持ち帰った子たちもいました。それでも残った20数箱のものも、近くのほんとうに本の好きな古本屋さんが全部ひきとってくれました。3冊百円でも買っていってくれるお母さんがいるそうです。ほんとうに嬉しいことです。


引越し作業中のティータイム。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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