平湯文夫の研究所だより No.031
3千円から3万円の材料費だけでできる学校図書館の手づくり改修法
『図書館を生きかえらせるシリーズ』3部作は、既に1万数千冊出たのもあって、その方法をとり入れていただいたところでは、「ほんとうに生きかえった」といっていただいたところも結構あります。平湯モデルの家具とそのレイアウト法も、各地に少しずつ広がって、学校図書館も公立図書館も一部で面目を一新しています。
しかし、「その家具を1個購入する、10万、20万のお金さえないというのが学校図書館現場の実情。お金がなくても、手づくりでもできる方法を教えてほしい」というむずかしい要望に困ってきました。
ところが、手づくりで学校図書館をどんどんつくりかえていく、図書係の先生や学校司書の方たちが、けっこうおられるのを知って、「これならいける」と自分もはまってしまったというのがこの1年でした。
そこで、生きかえらせるシリーズの『図書館家具絵物語』篇に「3千円から3万円でできる学校図書館の改修法」を16頁増補して改定版を出すことにしました。ところが、このたった16頁の増補が大変でした。
まず、考えついたら、自分でつくってみなければならない。次は、みなさんといっしょにつくってみないことには。そして、工具も木材も自分で探して買ってみないことには。
さらに、図面も写真も不可欠。説明の文章も勿論。デスクワークだけでは決してできないことです。そのための研修会、実習等もいくつもやりました。長崎県内でいくつか。大阪でも、島根でも、山梨でも、奄美でも。
それが、やってみると、通常の講演会や研修会よりもずっと手ごたえがあるのです。これからも、静岡、山口、その他で計画があります。
そしてやっと今、増補改訂版の最終仕上げに入っています。4月には出せるはずです。「これだったら私にもできる。これですっかり生きかえる」のキャッチコピーで始まり、全頁カラーで写真と図面いっぱいの納得のいくものです。
手づくりで生きかえらせる仕事は、実際には、ずいぶん大変なことですが、しかし、とても楽しくて充実感いっぱいで、各地で学校図書館が生きかえっていくにちがいないととてもたのしみです。
大木町の図書館に本が入りはじめました
「ゆとり教育」を推進された寺脇研さんの講演をききに行きました。
本も読みテレビも拝見したことはあっても会うのは初めて。
現在教えておられる京都造形芸術大学では、学生の悪口を言う先生は一人もいない。学長の話に学生は涙し、一人ひとりの学生のすばらしさに先生は感動しているというのはすばらしいと思いました。
氏のゆとり教育、調べ学習、総合学習の推進には、大変期待しましたが、政治家や財界の圧力をうけての、教育行政のあっけない後退には失望しました。
明治以来、日本の教育を中央からの指導でやりつづけてきた文科省は、今回の改革も同じ方法でできると思ったのが全く甘かったと思いました。管理教育に慣れきった、おそろしく本を読まない、自分のミッションをもたない先生たちが、そう容易に新しい教育に切り替えられるはずがありません。フィンランドの教育についての本なども次々と出ていますが、書店で買うのも、図書館で借りるのも、先生たちではないと聞きます。例外の先生がおられるのは勿論です。今年は、国民読書年、先生たちが本を読んでもらわないことには――。