研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.021


NHK「こころの時代」の放送が平湯モデルの図書館から

◎ふとスイッチを入れたテレビの画面が平湯モデルの図書館らしいのに、しばらく見入っていると、そこはまぎれもなく東京恵泉女学園中高校図書館。インタビューされているのは安積校長先生。2年ほど前にプランしてあげた学校図書館の、そのまさに中央をインタビューの場所に選ばれたということは、全面改築された広いすてきなキャンパスの中でも、校長先生がここを最も気に入ってくださっていて、ディレクターもよしとされたということかと嬉しい。

◎この4・5月は、平湯モデルをとり入れたいというところが相ついだ。少しうごきはじめたということか。有名私立大学が来春開校しようという小学校の図書館もプランを依頼された。公立小学校の数倍の広さで、活字資料だけでも3万冊で開館するという。2千万規模で校舎の改修を募っている百万都市で、学校図書館の改修で応募しようという小学校のプランも引きうけた。ラオスの子どもたちに図書館をつくってあげようという団体からも資料を求められたし、フィリピンの子どもたちのために計画している図書館も、そのうちぜひ現地を見てプランをしてほしいとのこと。岡山の山奥の中学、鹿児島の高校、日本最南端の石垣島の高校にもとりいれられることになった。それらが、10年も20年も30年も前に話をきいて以来忘れられなくて、といったようなのが多く、今芽吹くときを迎えているようにも思える。

◎同じ日に、図書館学を教える2人の教授から手紙がきた。「生きかえらせる」シリーズの中の「学校図書館をレイアウトで魅力的にする12のポイント」を図書館学のテキストに載せさせてほしいというのと、図書館のアメニティに関心が深く、私の論文など講義にも使わせてもらい著書の図書館学のテキストにも参考文献としてあげさせてもらっている。今、執筆中の著書でも紹介させてほしいので「生きかえらせるシリーズ」などほしい、というもの。

◎「岡山子ども図書館」づくりにとりくむ「岡山子どもの本の会」の創立7周年のつどいに出かける。文化庁長官・河合隼雄・工藤直子・斎藤惇夫・脇明子の豪華顔ぶれのシンポジュームに河合・斎藤両氏のフルートに工藤氏のハープによるコンサートというので、ノートルダム聖心女子大のホールはいっぱい。斎藤さんとは、福音館の編集部長時代に毎年学生たちをつれて子どもの本の制作過程を案内していただいていた時以来久方ぶり。帰りに訪ねた開館まもない岡山県立図書館の子どもコーナーと広島市立子ども図書館と帰ってあらためて訪ねた福岡市総合図書館の子どもコーナーという、いずれも全国有数の規模の子ども図書館をあらためて見てみて、岡山子ども図書館は、それらにない魅力的な図書館になりそうに思った。

◎ゴールデンウィークに東京からやってきた孫たちにも、2年前まで住んでいた家の庭のひとかかえにあまる椎の木の秘密基地に登らせるなど自然を体験させた。やはり手ごたえ十分。恒例の焼芋パーティーに参加したお母さんが、勝手にみつばや雪の下摘みにはまってどっさり持ち帰ったのには嬉しくなったが、片づけもので出かけるたびに、つわにふき、みつば、野いちご、びわ、みょうがなどの山菜や花々などひとかかえずつ持ち帰ることになり、狭い庭ながら土のままに残しておいた自然の恵みの豊かさに心が満ちみちてくる思いがする。

◎魅力的な学校図書館づくりに役立てようと、県教委で作成するパンフレットに、2年前に大改修した純心女子高・中学校の図書館の写真ものせてくださるという。さらに、県南地区高等学校司書研究会の例会を同校でもつので、新しい図書館の改修のポイントなど話してほしいというので館内を案内してあげた。小・中学校も含め、広く参考にしていただけるといい。

◎昼間、夜間の定時制に通信制の高校をひとつにして5年前に開校した県立鳴滝高校の図書館を浦先生をお誘いして訪ねた。浦先生は、かつての同僚で、県学校図書館協議会の会長や県立図書館長をなさり、大村高校長のときは、この鳴滝高校司書の松尾満里子さんと共に、平湯モデルによる大改修にとりくまれるなど、長崎県の学校図書館や公共図書館発展のために、いつも前向きに積極的にとりくんでくださった方。松尾さんの「なるたき図書館へようこそ」というほんとに名文の論文で、そのりっぱさは十分イメージしていたが、ほんとにりっぱだった。この学校図書館は地域にも開放していて、子どもも大人もごく自然に利用している。それが、開館2年目には地域にも1万冊台を貸出し、3年目からは生徒たちへの貸出しも1万冊台にのるなど、すごい利用なのである。それは、学校図書館問題研究会の創設時から参加するなど、常に学校図書館、公共図書館の最先端の方法を学びつづけてこられた賜物であると敬服する。全国のすべての学校司書が松尾さんのような真摯な努力をつづけていれば、近年の東京都や長崎県の高校司書に吹きあれているような逆風はこれほどではなかったはずである。その時、松尾さんに「すてきだから見るように」とすすめられた、長崎県教育委員会のホームページの立石教育長の「読書と私」はほんとにすてきです。のぞいてみてください。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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