研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.017


学校図書館を生きかえらせるうごきが広がっています。

◎6時に起きてJRで四国の高松へ。3日間の全国図書館大会に出席。夜も含めて全国の図書館の仲間たちに会えるのはまずたのしい。山口の山本さんの公共図書館部会での講演はりっぱ。子どもの読書推進の分散会では、りっぱな発表がある一方、読書環境の整備計画にとりくんだというさる自治体の発表に、学校図書館に常駐の人をおくこと、資料を豊かにすること、施設を楽しくつくり変えることという、いちばん大切なことにはほとんどとりくまれていないものもあった。それでは、条件整備は全くやらず、指導によって子どもたちに読書の習慣をつけさせようとした従来のやり方と同じではないか。そのことを率直にはっきりと指摘させてもらった。こんなとりくみ方しかしていない自治体も全国に少なくないはずだ。
 3日目、大会終了後、学校図書館のボランティアについての集会があったので参加した。学校図書館を生きかえらせようとする活動は確かに広がっている。各地のうごきをたくさんきかせていただこうという参加のつもりだったが、発言を求められたので、「先進的な方たちの中に、ボランティアや私費雇用はいけないといったような発言があるようだが、地域地域で状況はちがうので、先進地のスタンダードによるグローバリゼーションにめげず、自分の地域の実情の中で自信をもって活動してほしい」と発言をした。終わって、「このつどいでいちばん感動した。どなたか教えてほしい」という人もいた。活動をたじろかされている人たちが全国にたくさんいるはずだ。

◎最近、山形県の朝陽第一小学校の学校図書館の活動と、それを指導した高鷲忠美さんの講演の記事などよく目にする。そのつどいも目あてで、そのまま新幹線で上京。朝陽第一小学校図書館のビデオも高鷲さんの話もすばらしかった。高鷲さんの話が図書館関係者にはめずらしくたくまずしてうまい。

◎ちょうど「神田古本まつり」もあっていたのでこれも久しぶりにのぞいた。岩波の本を中心に売っている信山社ものぞいた。他社の本も3分の1ほどおいているようだが、この小さな書店に、今ぜひ求めたい本が何冊もあるというのがふしぎだ。大きな本屋は大きな本屋でありがたいが、こういう本屋がぜひ欲しい。古本屋もそうだ。
 日本一の売り場面積の本屋が東京駅の丸の内口にできたというので訪ねた。日本橋にあった丸善の本店が移ってきたもので、売り場面積というより、2メートル50ほどもあろう高書架を店内全体に並べた巨大本屋だ。「丸善本の図書館」もここに移ってきていた。昼はレストランのなつかしい早矢仕ライスにした。

◎この夏生まれた末娘の2人目の孫にも初対面。近頃、初めて妻にきいたことだが、この末娘が這い這いをし、単語を発するようになっていた頃のこと。這い這いをしてやっと仕事をしている僕のそばにやってくると、抱えあげては部屋の外に出し、襖を閉めていたところ、ついに堪忍袋の緒が切れたか、「パパ、チュカン」と初めてセンテンスをなしたことばを発したとか。31歳、新設の高校に移り、熾烈な進学指導のかたわら、学校図書館を生きかえらせる術を模索していた頃の切なくなる話。
 そんな余裕のなさは、その後、子ども文庫づくりや図書館づくりの運動、そして国語教師から図書館学を教えるようになり、そして、リタイヤ後の今もつづいている。子どもたちにしてやれなかったことが孫たちでつぐなえるのか・・・・・。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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