研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.016


一年半ぶりに沖縄を訪ねました。

◎春から約束しながら果たせないままになっていた沖縄行きをなんとかやりくって決行。
 ついでに、1日早く福岡に出て、「赤とんぼ」の高橋さんに、近年たてつづけにできた筑豊地区の図書館5館を案内してもらう。車中、久しぶりにいろいろ話もできてよかった。
 沖縄の1日目は休日だったので、初訪沖の頃からの旧友たちに、亡くなった友人のおつれあいと4人で一日ドライブ。自然をたんのうし、南部戦跡をめぐり、故人の思い出を語り、沖縄料理を食べて、ほんとにいい一日だった。
 2日目はまず、基本設計にチェックを入れて変更をお願いしてあげていた完成ま近いU中学校図書館を訪ねる。すべてではないが、大切なところをいくつも設計変更してもらって格段によくなっており嬉しい。建物や家具は1度できてしまうと数10年、ほとんど変えようがないから、計画、設計段階が決定的に重要なのに、現実は、日本中の小、中、高校の図書館のほとんどがノーチェックのままつくられてしまうのはなんとかしなければならない。壁面部分など工事分の家具はほぼ希望どおりにできそうだが、床置きの備品分が大半既存分を使わざるをえないのが残念。しかし、既存分にも数点平湯モデルが入っているのは救い。
 午後は、普天間基地や最近ヘリコプターが堕ちたことで有名な宜野湾市の学校図書館を4校案内してもらう。まず、クラスのない先生方といっしょに学校給食をいただいて、手づくりのサーターアンダギーをひとさげいただいてしまう。
 夕食は、司書の方たちと「ネーネーズ」のライブハウスで島唄をききながら。嘉手納基地のゲートに近いホテル泊。
 3日目は、まず具志川市の、プランをしてさしげた学校図書館3校をまわる。それぞれ手伝ったことでずいぶんよくなったことを校長先生にも司書の方たちにも喜んでいただいて嬉しい。
 なにしろ、まず具志川中の全面改築で、それまでのものより格段にりっぱな学校図書館ができてしまったことで、つりあい上からも、他校も改修せざるをえなくなったところがあるにちがいない。昨夏、高江須中、今夏、東中と改修がすでに済んで、さらに、残りの10校へも及んでいくのではないか。こんな展開をみるのは楽しい。また、展開していくように仕掛けをしていくことが大切だと思う。
 具志川中では、校長室で給食をいただいきながら、いつか日本一魅力的、といったことのある校長先生と話しこんでしまった。
 沖縄ではいつも移動の連携プレーがみごとで、具志川中のあとは、K村の新館準備室へつれていかれて相談にのった。そのあと、以前新館の設計中に講演に来たこともある開館まもない北谷町立図書館を訪ね、久しぶりに崎原さんに会って案内していただく。
 そのあと、近年沖縄でいちばんにぎあうという北谷の美浜をひとまわりして、有名なライブハウス「カラハーイ」でライブをききながら夕食。
 今回の訪沖には、来秋沖縄に予定している、大学のクラス会の下見とプランづくりもあったので、4日目はひとりでそれにあてる。1日目のドライブも、2日目、3日目の島唄のライブハウスも含めて、十分満足してもらえるプランができそう。

◎今月は、山口県の図書館関係者12名を諫早市立図書館と多良見町立図書館に、奈良の文庫関係者2人を佐賀と長崎の図書館に案内した。
 諫早市立図書館づくりをリードした中古賀さんの、「楽しくなくっちゃみんな集まってこないし、プラス志向でないと切り開けない」という話は、千金の重みがある。それに、会報の明快さが成功に導いたと思う。
 隣町の多良見町の方たちは、ほんとによくねばり強くがんばって、また九州・長崎の図書館を大きくリードする図書館をつくっていただいたと思う。設計者の寺田さんの、苅田、伊万里、多良見と九州の図書館の展開に果たしてくださった功績もはかり知れない。しかし書架につけられた様々な装飾(?)は、シンプルを旨とする平湯モデルとはますます大きく離れていくと感じた。

◎長崎市の中学校全35校の図書主任の先生方の集まる研修会に招かれた。会場になったY中学校図書館の輝きに驚いた。長崎市とその周辺の学校図書館は、ボランティアの方たちの活躍がめざましいが、ここはその先端をいくのではないか。ここのボランティアのMさんは、ボランティアをしながら、「これは素人にできる仕事ではない。専門的な勉強をしなければ」と、3年ほど前に、私の大学の司書課程の受講者となられて、最前列での受講をつづけ、司書資格をとられた。「はまりましたね」。「はまりました」。
 先の県議会で県教育長が、小、中学校図書館への専任の学校司書配置について検討する旨の答弁があったという新聞記事を見た。学校図書館がうごきだしたら、学校がどう変るか。経験はおろか、見たこともないところでは、ボランティアでもなんでも、とにかく、あるレベルのものをつくり出して見てもらうことからしか何も始まらないというのが私の持論である。子どもの読書推進法などの国のうごきのなかで、ボランティアの活動も一つの力になって、これまで考えられなかったような県教委のとりくみになっていくのではないかという気もしている。ほんとに嬉しいニュースである。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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